🇲🇪視点の🇷🇸のお話です。
不穏描写を含みます。
不快になった方はすぐに
視聴をおやめください!
あたしはモンテネグロ。
姉さま……、セルビアの家に訪れている。
今日は、数十年前から閉まっている筈の
『開かずの扉』____と、勝手に呼んでいるだけなのだけれど。それが開いていた。
あたしは好奇心に勝てなかった。
____あぁ、見なければよかった。
「ミモザ」
夏の終わりの風のような声が耳に触れる。あたしは姉さまの家の玄関前に立っていて、やっと出てきてくれた。
「姉さま?やっぱり出てくるのが遅いわ。まあ、いつもこうだけれど」
あたしは軽口を叩いて家に上がり込んだ。よく会いはするけれど、家に来るのは何年振りだろう。
ああ、汚いなぁ。
というのも、姉さまは片付ける事が大の苦手だ。だったら自宅が汚いのは当たり前だろう。反対に、あたしは片付けが、どちらかというと好きだ。心も体も健康な証でしょ?姉さまと違ってね!
「部屋、掃除していい?」
姉さまは、こっちなんか見ずにパソコンに向かって何かをしている。多分仕事だな。よくこんなに汚い部屋でできるものだ。それでも返答はくれた。頷いただけだったけどね……。
「わかった。もう家中掃除するからね。」
……反応なし、か。
さて、どうしようか。家中が汚すぎて、どこから手を付けたらいいかがわからない。
何だか腹が立ってきた。この汚すぎる家にもだけれど、さっきの姉さまの反応!本当はいつもの事なんだけど、今日は無性に腹が立った。
そうだ、姉さまの部屋を掃除してやろう。変なモノが出てくるかもしれない。それこそ、おかしな道具でも出てきたら笑いのネタとして誰かに送り付けてもいい。そんな事しないけれど。いや、もうできない。
____過去を想っても意味がない。さあ、片付けよう。
まずはありったけのゴミを袋に詰めこむ。一応国なんだからゴミぐらい捨てなさいよ。床に散乱してるし。当分ここの部屋は使ってないんだろうな、物置き化してるわ。一体どこで寝ているんだ。さっきのリビングも寝れそうな場所は無いのに……。
____ッきっったね!!!!
床、一体どうなってるのコレ、ク◯ックルワ◯パー使お……。
そんな事を思っていると、ヒラリ、と一枚の写真が何処からともなく舞い落ちてきた。何だろう。
「あ」
その瞬間の声は、誰だって出してしまう筈だ。不可抗力、抗えはしない。だって、そこには30年前程に亡くなった『ユーゴスラビア』の姿があったから。あたしは頭を抱えた。どうしようか。うーん、とりあえず、此処に置いておこう。これは勝手に捨てられるような代物では無い。なんせ、あたしもお世話になったからね。いや、あたしだけじゃない。構成国は皆お世話になっている。全く……こんな大切なものをこんなゴミ山に放り込むんじゃないわよ。
とりあえず、これで良いだろう。
姉さまの部屋は、見違える程綺麗になった。自画自賛だけど、これは誰が見ても凄いと言うはずだ。あたし、すごくね?
姉さまの部屋から出たゴミ袋達を持って運んでいるとき、扉が目に入った。
ああ、『開かずの扉』だ。いつも姉さまの家に来るたび、何だろうと思っている。
____あ。
開いている。部屋が。鍵が掛かっていない!あの『開かずの扉』が開いている。少しだけなら、見てもいいよね?
開けた瞬間の匂いは、ゴミまみれで散らかった部屋とは全く違う匂い……、懐かしい匂いがした。
思い出せないが、確かに懐かしい。
「____綺麗、だ。」
部屋が綺麗だった。ゴミが落ちていないどころか、埃一つない綺麗な部屋だった。
姉さまはこの部屋で寝ていたのか、なるほど。よかった、ちゃんと掃除できるんだ。
あたしは暗がりの部屋に入り込んだ。
これが間違いだった。
暗がりなのに、あたしは電気を付けなかった。カーテンも閉め切っていて、ベッドがひとつあるだけ。あたしはベッドに近づいた。
「___ッ」
なんで、なんでなの?どうして。おかしい。あたしは目がおかしくなった?
どうして、『ユーゴスラビア』、貴女がここにいるの?
貴女、あの日死んでしまったんじゃないの?
寝ているようだった。死んでしまったとは思えない顔。そうだ、国女の死体は腐らないんだ。一生そのまま残り続ける____。
この匂いは『ユーゴスラビア』、貴女の匂いだったのね?
いいえ、そうじゃない。どうして貴女が姉さまの家に居るの?どうして“生きている国女のように”ベッドの中に居るの?
どうして、どうして、どうして____。
あたしはベッドの上の彼女に夢中で、足音に気付かなかった。
「モンテネグロ」
姉さまだ、どうしよう、あたし何してるんだろう。でも、聞こえてきた声は玄関前で聞こえた声と何も変わらない。
「モンテネグロ、どうした?」
あたしはゆっくりと後ろを振り向く。
____背筋がゾッとした。
いいえ、凶器を持っていた訳でも、見たことのない形相の顔をしていた訳でもないわ。
“いつもと変わらない”から怖かったの。
「い、ッいいえ、姉さま……?あたし、なにもみてないわ、」
ああ、あたしは今、やらかした。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。